木の板の上に並べた12枚の白い小皿。それぞれに色の違う香りの原料の粉や刻みが盛られている

香りのもとと、それを形にする粉。お香の中身は、思うよりシンプル。

この記事の要点

  • スティックのお香の原料は、香りのもと(香木・漢方などの香原料・樹脂・香料)と、形をつくる基材(タブノキの樹皮の粉=タブ粉など)、練るための水の3つです。
  • nagomi.の7つの香りは、すべて「椨(タブ)の樹皮粉」と「香料」が基本。白檀には白檀が、沈香には白檀と沈香が加わります。
  • 香りのノート(リンゴ、ヒバ、ネロリなど)は香りの移ろいを表したもので、原材料の一覧とは別の情報です。
  • 原材料の表示で分かるのは「何が入っているか」まで。香りの良し悪しは、焚いて確かめるのがいちばん確かです。

お香の原料は、大きく分けて香りのもとと、形をつくる基材、そして練るための水です。香りのもとには白檀や沈香などの香木、桂皮や丁子などの漢方の香原料、樹脂、香料があり、基材にはタブノキの樹皮を粉にした「タブ粉(椨粉)」がよく使われます。これらを水で練り、細く成形して乾かしたものがスティックのお香です。

この記事では、それぞれの原料の役割を整理したうえで、nagomi.の7つの香りの原材料表示を例に、表示から分かること・分からないことを見ていきます。

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結論 — 香りのもと+形をつくる粉+水

役割主な原料nagomi.の原材料表示では
香りのもと香木(白檀・沈香など)、漢方の香原料(桂皮・丁子など)、樹脂、香料白檀・沈香・香料
形をつくる基材タブ粉(タブノキの樹皮の粉)、木の粉椨(タブ)の樹皮粉
練るための水粉に加えて粘りを出し、成形したあと乾かす表示なし

香りのもとだけでは、粉のままで形になりません。基材が香りのもとを抱え込んでひとつの形にまとめ、火をつけると基材が静かに燃え、その熱で香りが立ちのぼります。つまりお香は、香りを運ぶ「器」まで含めて一本です。

香りのもと — 香木・漢方・樹脂・香料

香りのもとは、お香の「何の香りか」を決める原料です。代表的なものを4つに分けると次のようになります。

  • 香木 — 白檀や沈香、沈香の中でも特に貴重とされる伽羅。木そのものが香ります。
  • 漢方の香原料 — 桂皮(シナモン)や丁子(クローブ)、龍脳など。香木の香りに奥行きや輪郭を添えます。
  • 樹脂 — バニラを思わせる甘さの安息香、乳香・没薬など。木からにじみ出て固まったものです。
  • 香料 — 植物などから香りを取り出したものや、香りを組み立てたもの。花・果実・お茶のような香りもつくれます。天然香料と合成香料の違いは天然香料と合成香料の違いで、どちらか一方が良いという話ではないことも含めて整理しています。

nagomi.のお香は、天然香料を使用しています(商品情報の記載)。

nagomi. 香り監修 川辺一寛

川辺 一寛nagomi. 香り監修

天然原料を使用していることと、すべての人に刺激がないことは同じではありません。無理のない量と環境で楽しむことが大切です。

形をつくる基材 — タブ粉

木の鉢に盛られた淡い茶色の粉と、木のさじ、タブノキの葉

タブ粉は、タブノキの樹皮を乾かして挽いた粉。

日本のお香の基材として長く使われてきたのが、タブ粉(椨粉)です。タブノキの樹皮を乾燥させて細かく挽いた粉で、水を加えて練ると強い粘りが出ます。この粘りが香りのもとの粉をむらなくまとめ、乾かすとスティックの形のまま固まります。

基材にとって大切なのは、それ自体が強く香らないことです。タブ粉はほぼ無臭に近く、燃やしてもほのかな木の匂いがある程度なので、主役の香りを邪魔しません。性質や自作での使い方はタブ粉とは?に、家での作り方の手順はお香の作り方にまとめています。

スティックの形にも種類があります。竹ひごの芯に香りの生地をまとわせたものもあれば、芯を使わず生地だけを細く押し出して固めたものもあります。nagomi.のお香は後者の、竹芯のない押し出し成形です。芯がないので、火をつける前なら手で折って長さを変えられます。

原材料(成分)表示を読む — nagomi.の7つの香りで

nagomi.の製品情報に載せている原材料を、香りごとに「入っている(●)/入っていない(—)」で並べ、内容量を添えたのが次の図です。

原材料に入っているもの(●)と、内容量 タブ 樹皮粉 白檀 沈香 香料 内容量 白檀 — 20g 沈香 20g 檜 — — 20g ホワイトティー — — 24g 金木犀 — — 20g ジャスミン — — 24g パロサント — — 21g
出典:nagomi. 商品情報一覧(株式会社若林佛具製作所、2026年8月17日時点)の「材質」「内容量」の欄。赤の●は香木(白檀・沈香)。内容量はどれも約60本で、重量で管理しているため本数は前後します。

表示の書き方そのものも、並べておきます。

香り原材料(表示どおり)
白檀椨(タブ)の樹皮粉、白檀、香料
沈香椨(タブ)の樹皮粉、白檀、沈香、香料
檜椨(タブ)の樹皮粉、香料
ホワイトティー椨(タブ)の樹皮粉、香料
金木犀椨(タブ)の樹皮粉、香料
ジャスミン椨(タブ)の樹皮粉、香料
パロサント椨(タブ)の樹皮粉、香料

図と表から読み取れるのは、次の4つです。

  • 基材は7つ共通 — どの香りにも「椨(タブ)の樹皮粉」が入っています。
  • 香木そのものが入るのは2つ — 白檀には白檀が、沈香には白檀と沈香が入っています。沈香の一本に、白檀も使われていることは表示を見ないと分かりません。
  • ほかの5つは香料で香りをつくる — 檜・ホワイトティー・金木犀・ジャスミン・パロサントの原材料は「椨(タブ)の樹皮粉、香料」です。花やお茶の香りは、香料で組み立てています。
  • 香料はひとまとめに書かれる — どの香料をどれだけ使っているかは、表示には出てきません。

ここで間違えやすいのが、香りのノートと原材料の違いです。nagomi.は各香りのページで、点けてすぐ・燃焼中・消えたあとの香りの移ろいをノートで公開しています。檜なら「リンゴとグリーンの立ち上がりから、ヒバの澄んだ木の温もりへ」。これは香りがどう感じられるかを表した言葉で、原材料の一覧ではありません。何でできているかは原材料の欄、どう香るかはノート、と分けて読んでください(お香づくりのこだわり)。

nagomi. お試し香(5種×4本)

表示では分からない香りの違いを、焚いて確かめる。

お試し香は、香木の沈香と、香料で香りをつくる檜・金木犀・ホワイトティー・ジャスミンの5種を4本ずつ。1本約7cm・約15分です。白檀とパロサントは入っていません。¥750(税込)

原料の名前で探す人は多い — 白檀と沈香

お香を探すとき、原料の名前は大きな手がかりになっています。nagomi.のAmazon広告が表示された検索語(2026年8月22日〜10月21日)を香りの名前ごとに分けると、「白檀・サンダルウッド」を含む語が表示全体の13.2%、「沈香・アガーウッド」を含む語が6.4%でした。花やお茶の名前を含む語より、香木の名前を含む語のほうがずっと多く表示されています。

香りの名前を含む検索語の、表示の割合 白檀 13.2% 沈香 6.4% 檜 1.7% 金木犀 1.7% ジャスミン 0.9% ホワイトティー 0.1% パロサント 0.1%未満
出典:nagomi. のお香のAmazon広告が表示された検索語(2026年8月22日〜10月21日、約90万回の表示)を、語に含まれる香りの名前で分けた表示の割合。白檀はサンダルウッド、沈香はアガーウッド、檜はひのき・ヒノキ、ホワイトティーは白茶を含む。広告が表示された分だけの集計で、検索全体ではありません。

検索語には「沈香 お香 天然」(約1.5万回)、「白檀 お香 天然」のように、原料の名前に「天然」を添えた語も表示されています。原料が本物かどうかを気にしながら探す人もいる、と読めます。白檀のお香の見分け方は白檀の見分け方で扱っています。

ただ、白檀や沈香の名前で選ぶときも、表示の「白檀」「沈香」だけで香りの良し悪しまでは分かりません。nagomi.の白檀は、インド白檀の甘さに桂皮と丁子をさりげなく重ね、沈香は、シャム沈香の奥深い香りを主役に漢方をほんのり忍ばせた静かなバランスに仕立てています。どう香るかを決めているのは、原料の名前より配合です。

原料で香りの良し悪しは決まる?

良い原料は欠かせません。けれど、同じ原料を使っていても、配合、練り方、乾燥状態などのわずかな違いで、火をつけたときの香り方は変わります。淡路島の香司の仕事を間近で見た川辺が、お香づくりのこだわりで語っていることです。では、香料の良し悪しは何で見るのか。川辺は次のように話します。

nagomi. 香り監修 川辺一寛

川辺 一寛nagomi. 香り監修

香りの強さだけではなく、自然さ、奥行き、持続性、燃焼中の変化、そして焚き終わった後の残り香を総合的に判断します。

最初に強く香るものが、必ずしも良い香料とは限りません。刺激が強すぎないか、時間がたったときに不自然な甘さや薬品のようなにおいが残らないか、ほかの原料と調和しているかも大切です。

最終的には、原料の名前や価格だけで判断せず、実際に試作したお香を焚いて確認します。

お香は、基材が燃えた熱で香りが立ちのぼる仕組みです。燃える温度が高すぎたり、香りのもとと基材のバランスが崩れていたりすると、香料そのものが焦げて、香りの上に焦げ臭さがかぶさります。nagomi.が兵庫県・淡路島の香司(こうし)と焚き比べを重ねているのは、この濁りを抑えるためです。淡路島は線香の生産量が国内最大の産地で、兵庫県の線香の全国シェアは約5割(経済産業省の統計、2022年)です(淡路島のお香)。

原材料の表示で分かるのは「何が入っているか」までです。香りが自分に合うかどうかは、焚いて確かめるのがいちばん確かです。迷ったら、短い一本で何種類か焚いてみてください。

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よくある質問

お香の原料は何ですか?
スティックのお香は、香りのもと(白檀・沈香などの香木、桂皮・丁子などの香原料、香料)と、形をつくる基材(タブノキの樹皮の粉など)を水で練り、成形して乾かしたものです。
タブ粉とは何ですか?
タブノキ(椨)の樹皮を乾燥させて粉にしたものです。水を加えると粘りが出るため、香りのもとをまとめてスティックの形に固める基材として使われます。それ自体はほぼ無臭に近い素材です。
nagomi.のお香の原材料は何ですか?
7つの香りすべてに、椨(タブ)の樹皮粉と香料が使われています。白檀には白檀が、沈香には白檀と沈香が加わります。香料は天然香料を使用しています。
香りのノートと原材料はどう違いますか?
ノート(点けてすぐ・燃焼中・消えたあと)は、香りがどう移ろうかを表したものです。原材料は、何でできているかを表します。たとえば檜のノートには「リンゴ」とありますが、原材料の欄は「椨(タブ)の樹皮粉、香料」です。
nagomi. 香り監修 川辺一寛

Supervisor

川辺 一寛nagomi. 香り監修

京都生まれ、京都育ち。株式会社若林佛具製作所にて四半世紀以上にわたり香りと向き合い、仏事コーディネーター・京仏マスターソムリエの資格を持つ。nagomi.では香りの方向づけと、淡路島の香司との焚き比べ・共同開発を担う。

原材料に白檀と沈香、2つの香木。nagomi. 沈香(約60本)

原材料に白檀と沈香、2つの香木。nagomi. 沈香(約60本)

原材料は椨(タブ)の樹皮粉、白檀、沈香、香料。シャム沈香の奥深い香りが主役の、静かなバランスです。淡路島で製造・天然香料使用。¥1,280(税込)

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