海を望む淡路島の町並みと、天日で乾燥される線香の風景

船を止めた風が、香りの仕事を運んできた。

この記事の要点

  • 淡路島は線香の生産量が国内最大の産地で、その中心は西岸の江井(えい)地区と伝わります。
  • 製法は江戸末期の嘉永年間に堺から伝わったとされ、約170年の歴史があります。
  • 根づいた理由は冬の強い西風で、船が出せない閑期の手仕事として線香づくりが選ばれたとされています。
  • 経済産業省の工業統計調査では、2022年の兵庫県の線香生産量は2,668トンで全国の約5割です。

瀬戸内海に浮かぶ淡路島は、線香の生産量が国内最大の産地です。玉ねぎでも観光でもなく「線香の島」としての顔を、この島は170年ほど持ち続けています。なぜ淡路島だったのか。その答えを探ると、冬の強い西風にたどり着きます。この記事では、淡路島が線香の産地になった歴史をたどります。

始まりは江戸末期 — 堺から伝わった製法

淡路島の線香づくりは、江戸末期に堺から製法が伝わったところから始まったとされています。その中心は、島の西岸にある江井(えい)地区と伝わります。かつて江井は海運で栄えた港町でした。

線香の製法がこの町に伝わったのは、江戸末期の嘉永年間とされています。当時、線香づくりの先進地だった堺から、田中辰造という人物が製法を持ち帰ったと伝わります。詳細は伝承の域を出ませんが、海運で外とつながっていた港町だからこそ、よその土地の技術が入ってきた——という筋書きは自然に思えます。日本の線香そのものの歩みはお香の歴史で詳しく解説しています。

冬の西風が、海運を止めた

製法が江井に根づいたのは、冬の強い西風で船が出せず、その閑期の仕事として線香づくりが選ばれたからだとされています。よく知られている冬の西風の説です。

江井の港は西を向いています。冬になると強い西風が吹きつけ、船が出せない日が続いたと伝わります。海運の町にとって、船が止まることは仕事が止まること。そこで、農閑期・漁閑期(農業や漁業の仕事が少なくなる時期)の手仕事として線香づくりが選ばれたとされています。屋内でできて、原料と道具があれば成り立ち、冬の乾いた空気はむしろ味方になる。閑期の副業として始まった仕事が、やがて町の本業に育っていったという説です。

「線香の島」ができるまで 堺から製法が 伝わる 冬の西風で 海運が止まる 閑期の仕事と して根づく 国内最大の 産地へ 支えたのは、乾燥に適した気候と、港町に息づいた手仕事の文化。

乾燥に適した気候 — 線香づくりと風土

線香づくりの仕上げは乾燥です。練った生地を線状に成形したあと、割れず曲がらず、ゆっくり均一に乾かす必要があります(お香の作り方)。

淡路島の気候は、この工程に向いていたと伝わります。瀬戸内の比較的雨が少ない気候と、程よく乾いた風。もともと海産物の乾物づくりが盛んだった土地柄で、「乾かす」ことへの土地の知恵があったともいわれます。技術・動機・風土の三つがそろって、江井は線香の町になっていきました。

数字で見る、現在の淡路島

伝承だけでなく、現在の姿を数字でも確認しておきます。

項目内容
産地としての位置づけ線香の生産量が国内最大の産地
生産量経済産業省の工業統計調査では、2022年の兵庫県の線香生産量は2,668トンで全国の約5割
中心地淡路市の江井地区と伝わる。今も町を歩くと線香が香る
始まりの時期江戸末期・嘉永年間に堺から製法が伝わったとされる

約170年のあいだ、この島では毎日どこかで線香が乾かされてきました。産地であるということは、比べる目と直す手が近くにあるということ。香りを設計する職人・香司が育つ土壌も、ここにあります(香司とは)。

nagomi. が、この島の香司と組む理由

nagomi. は1830年(天保元年)に京都で創業しました。京都は千年にわたって香りの文化を磨いてきた町です(京都とお香)。しかし、私たちは自前の工房でお香を作ることを選びませんでした。燃やしたときの香りを形にする技術は、毎日それを続けてきた産地がいちばん深いと考えたからです。

だから、nagomi. のお香は淡路島の香司との共同開発です。京都の私たちが「日常に、香りの間(ま)を。」という方向を描き、西風の町で磨かれた技術がそれを一本の形にする。焚き比べを重ねるその過程は、お香づくりのこだわりで詳しくご覧いただけます。

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よくある質問

淡路島はなぜ線香の産地になったのですか?
江戸末期に堺から製法が伝わったとされ、冬の強い西風で海運が止まる時期の仕事として根づいた説が知られています。乾燥に適した気候も線香づくりに向いていたと伝わります。複数の条件が重なって産地に育ちました。
淡路島の線香づくりはいつ始まったのですか?
江戸末期の嘉永年間に、江井地区へ堺から製法が伝わったのが始まりと伝わります。田中辰造という人物が持ち帰ったという話が広く知られていますが、伝承であり詳細には諸説あります。
淡路島の線香の生産量はどれくらいですか?
淡路島は線香の生産量が国内最大の産地です。経済産業省の工業統計調査では、2022年の兵庫県の線香生産量は2,668トンで全国の約5割を占めており、その大部分を淡路島が担っているとされています。
江井地区とはどんな場所ですか?
淡路島の西岸にある港町で、淡路島の線香づくりの中心地と伝わります。かつては海運で栄え、現在も路地を歩くと線香の香りが漂う「香りの町」として知られています。
nagomi. のお香も淡路島で作られているのですか?
はい。nagomi. のお香は、淡路島の香司と共同で開発し、日本国内で製造しています。京都で1830年に創業した私たちが香りの方向を描き、産地の技術がそれを形にしています。
nagomi. 香り監修 川辺一寛

Supervisor

川辺 一寛nagomi. 香り監修

京都生まれ、京都育ち。株式会社若林佛具製作所にて四半世紀以上にわたり香りと向き合い、仏事コーディネーター・京仏マスターソムリエの資格を持つ。nagomi.では香りの方向づけと、淡路島の香司との焚き比べ・共同開発を担う。

淡路島の香司と作った5つの香り。nagomi. お試し香(5種×4本)

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