明石海峡大橋。この橋の先に、線香づくり日本一の島が広がむ島がある。
香りの島、淡路島。
線香の生産量がもっとも多いのは兵庫県で、そのほとんどが淡路島でつくられています。経済産業省の工業統計調査では、兵庫県の全国シェアは年によって2〜5割。2022年は2,668トンで、全国の約5割にあたります。始まりは江戸末期の1850年ごろ、堺から熟練の職人が移り住んだことでした。島の北西にある港町・江井(えい)は良港でしたが、冬になると強い西風で海に出られない日が続きました。その季節の生業として根づいたのが、線香づくりでした。
湿度と風がほどよく、香りを急がせずゆっくり乾かせる気候。原料が集まる海運の便。そして何より、170年以上途切れることなく受け継がれてきた、香りを調合する職人「香司(こうし)」の技。お香をつくるためのすべてが、この島には揃っています。
nagomi.がこの島でつくるのは、産地に敬意を払うためでも、物語がほしいからでもありません。いちばん良い香りをつくれる場所が、ここだからです。
川辺 一寛nagomi. 香り監修
香りの微妙な違いを見分ける感覚の細かさに驚きました。
同じ原料を使っていても、配合、練り方、乾燥状態などのわずかな違いによって、火をつけたときの香り方は変わります。香司は、原料の状態だけでなく、香りの立ち上がり、広がり方、燃焼中の変化、残り香まで確認しながら調整しています。
お香づくりは、良い香料を混ぜれば終わりではなく、実際に火をつけたときに完成する仕事なのだと感じました。
香司とともに、配合から。
nagomi.のお香は、完成品に名前を付けたブランドではありません。京都で1830年から香りを商ってきた目利きが香りの方向を定め、淡路島の香司が配合に落とし込む。試作して、焚いて、また配合を変えて焚く。この往復を重ねて、ひとつの香りをつくっています。
基準になるのは、いつも「焚いているあいだの香り」。箱を開けた瞬間の香りがどれだけ良くても、火を点けて崩れるなら、それは私たちのお香ではありません。
焦げ臭さの正体と、それを抑える設計。
お香を焚いたとき、香りの奥に焦げたような匂いを感じたことはないでしょうか。あれには、はっきりした理由があります。
お香は、天然香料と基材(タブノキの樹皮を粉にした「椨粉(たぶこ)」など)を練り合わせ、乾かしたものです。火を点けると基材が静かに燃え、その熱で香料が立ちのぼる——これがお香の香りの仕組みです。ところが、燃える温度が高すぎたり、香料と基材のバランスが崩れていると、香料そのものが燃えて焦げてしまう。本来の香りの上に焦げ臭さがかぶさり、香りが「濁る」のです。
nagomi.は、この濁りを極限まで抑えることに、開発時間の大半を使っています。香司との焚き比べを繰り返し、香料が焦げずに最も澄んで立ちのぼる配合を探る。煙を「消す」のではなく、「濁らせない」。これがnagomi.の調香設計です。
川辺 一寛nagomi. 香り監修
火をつけた直後ではなく、炎を消して煙が安定してからの香りを確認します。
お香は火を使うものなので、多少の燃焼臭は必ずあります。そのうえで、燃焼臭だけが前に出ているのか、その奥に白檀や沈香、花、柑橘などの素材の香りがきちんと感じられるのかを見ます。
質の良いお香は、ただ強く香るのではなく、香りに奥行きがあり、焚いている途中や焚き終わった後にも、自然な余韻が残ります。
香りを、時間で設計する。
焦げに邪魔されない香りは、時間とともに美しく移ろいます。だからnagomi.は、香水のように香りをノートで設計し、そのまま公開しています。
- TOP(点けてすぐ)— 火を点けた瞬間の立ち上がり
- MIDDLE(燃焼中)— 部屋が満ちていく、その香りの中心
- LAST(消えたあと)— 部屋と衣に残る余韻
各香りのページで、それぞれのノートをご覧いただけます。お香を「一本の香水」として選んでみてください。
- 産地
- 淡路島(線香の生産量が国内最大)
- 開発
- 淡路島の香司と共同開発・配合から設計
- 監修
- 京都・1830年から続く香りの目利き
- 基準
- 燃焼中の香り。焦げ臭さを抑えた濁りのない煙
