ここ数年、日本でも急速に名前を聞くようになったパロサント(Palo Santo)。ヨガスタジオやセレクトショップで、あの独特の甘くスモーキーな香りに出会った方も多いのではないでしょうか。この記事では、パロサントとは何か、どんな香りなのか、そして日本のお香として仕立てるとどう変わるのかを解説します。

パロサントの木片 — 樹脂を含んだ木肌と削り屑

樹脂を蓄えた木肌。この樹脂が、あの甘さの正体。

この記事の要点

  • パロサントはスペイン語で「聖なる木」を意味する、中南米に自生するカンラン科の香木です。
  • あの甘い香りは、自然に倒れた木が数年から十数年かけて朽ちる間に樹脂が凝縮して生まれます。
  • 木片は火が消えやすく時間も不定ですが、お香スティックは約30分で安定して燃えます。
  • 野生種の減少が指摘されているため、自然倒木のみの使用か植林由来かを確かめて選んでください。

「聖なる木」という名前の由来

パロサントはスペイン語で Palo(木)+ Santo(聖なる)、そのまま「聖なる木」を意味します。エクアドル、ペルー、ボリビアなど中南米の乾燥林に自生するカンラン科の樹木で、学名を Bursera graveolens といいます。

興味深いのは、この木が同じカンラン科の乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)と親戚であることです。世界の三大香木ともいえるこれらが、みな同じ科に属している。人が「神聖だ」と感じる香りには、植物学的な共通点があるのかもしれません。

現地では古くから、儀式や祈りの前に焚いて場を清める習慣がありました。日本でお香が仏前や茶室で焚かれてきたのと、驚くほど似た使われ方です。

あの独特の香りは、どこから来るのか

パロサントの香りで決定的に重要なのが、「倒れてからの時間」です。

この木は、生きているうちはさほど強く香りません。自然に倒れ、地面で数年から十数年かけてゆっくり朽ちていく過程で、幹の内部に樹脂が凝縮していきます。この熟成を経た木だけが、あの甘く深い香りを持つのです。切り倒したばかりの木では、同じ香りは出ません。

香りの主成分にはリモネン(柑橘に含まれる爽やかな成分)などが含まれ、ウッディでありながら明るい立ち上がりを感じるのは、このためです。

他の香木と比べてみる

パロサントは、白檀ほど甘くなく、沈香ほど暗くない。甘さは中程度で、香りの明るさは香木のなかでもやや明るい側に位置します。日本人になじみのある香木と並べると、その立ち位置が見えてきます。

パロサント白檀沈香
産地中南米インド・インドネシア等東南アジア
香りの核甘いウッディ+スモーキーミルキーな甘みビターな樹脂
明るさやや明るい穏やか暗く深い
甘さ中〜強
文化的背景中南米の儀式仏教・茶道香道・王朝文化
明るい → ← 深い 甘い ↑ ↓ ドライ パロサント 甘く、やや明るい 白檀 沈香 ※ nagomi. の香り設計における相対的な位置づけです。

木片とスティック、どちらを選ぶか

毎日の習慣にするならスティック、儀式的に使いたいなら木片が向いています。日本で見かけるパロサントには、大きく2つの形があるためです。

木片(チップ)お香スティック
香りの強さ強い・力強い穏やかで安定
多いスティック並み
火の扱い消えやすく、つけ直しが必要一度点ければ最後まで燃える
時間不定(数分で消えることも)約30分で一定
向く場面儀式的に使いたいとき毎日の習慣にしたいとき

木片は「本場らしさ」がありますが、火が消えやすく、何度もつけ直すことになりがちです。香りを毎日の習慣にしたいなら、燃焼時間が安定したスティックのほうが扱いやすいでしょう。

知っておきたい、持続可能性の話

人気の高まりとともに、パロサントの野生種の減少が指摘されるようになりました。産地では伐採や輸出に規制が設けられている国もあります。

選ぶときは、自然に倒れた木のみを使っているか、植林由来かといった供給元への配慮があるかを見てください。「聖なる木」と呼ばれてきたものを、絶やさずに受け継ぐために、買う側にできることでもあります。

日本のお香として仕立てると

nagomi.のパロサントは、この香りを日本のお香として設計し直したものです。淡路島の香司(こうし=香料の配合を設計する職人)とともに、木片をそのまま焚いたときの荒々しさを整え、日本の住空間で毎日使える濃度に調整しました。

柑橘を思わせる明るい立ち上がり、甘さとスモーキーが溶け合う燃焼中、そしてほのかに甘い木の余韻へ。この移ろいをTOP・MIDDLE・LASTのノートで設計しています。焦げ臭さを抑える調香設計についてはこだわりのページで詳しく紹介しています。

よくある質問

どんな時間に焚くのがおすすめ?
仕事終わりの気分転換に向いています。甘さと深みのバランスがよく、一日の緊張を解きほぐしたいときにちょうどよい強さです。来客前の空間づくりにも使えます。
ホワイトセージとどう違う?
ホワイトセージは草の青さと苦みが立つ、シャープで薬草的な香り。パロサントは木の甘さが中心で、より柔らかく親しみやすい印象です。
香りが強すぎませんか?
木片で焚くと強く感じることがありますが、お香スティックは香りの濃度が設計されているため、6畳程度の部屋なら一本でちょうどよく香ります。
お試し香に入っていますか?
お試し香は定番5種(白檀・沈香・檜・ホワイトティー・金木犀)の構成のため、パロサントは含まれていません。気になる方は単品からお試しください。
nagomi. 香り監修 川辺一寛

Supervisor

川辺 一寛nagomi. 香り監修

京都生まれ、京都育ち。株式会社若林佛具製作所にて四半世紀以上にわたり香りと向き合い、仏事コーディネーター・京仏マスターソムリエの資格を持つ。nagomi.では香りの方向づけと、淡路島の香司との焚き比べ・共同開発を担う。

nagomi. パロサント お香 約60本

甘く、深い、聖なる木。nagomi. パロサント(約60本)

淡路島の香司と仕立てた、日本の住空間のためのパロサント。天然香料・日本製。¥1,280(税込)

香木そのものについては沈香(アガーウッド)とは?伽羅とは?もあわせてどうぞ。

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