雨粒の伝う窓辺で、香立てに立てたお香から細く煙が上がっている様子

雨の日の困りごとは、ほとんど湿気のせいです。

この記事の要点

  • 雨の日の「火がつかない」「香りがこもる」「気分が沈む」は、いずれも湿気の扱いで変わります。
  • 保管は密閉容器+乾燥剤が基本。湿ったお香は数日で火のつき方が戻ることがあります。
  • 点火は先端が赤くなるまで長めに炙り、焚くのは半分に折って約15分。換気は焚く前か焚いたあとに行います。
  • 雨の匂いと喧嘩しないのは檜のような清涼系。甘い香りは量を控えめにするとちょうどよく収まります。

秋の長雨(秋雨)の時期になると、「急にお香の調子が悪くなった」という声が増えます。夏の湿気の季節を無事に越えたのに、なぜ秋になってまた、と思われるかもしれません。答えは単純で、雨が続く数日間は、部屋の湿度が梅雨と同じくらいまで上がるからです。この記事では、雨の日に起きやすい3つの困りごとを、原因と対処に分けて整理します。

雨の日の困りごとは3つ — 火・こもり・気分

雨の日にお香で困ることは、「火がつきにくい」「香りがこもる」「気分が沈む」の3つにほぼ集約されます。それぞれ原因が違うので、対処も別々に考えるのが近道です。

困りごと主な原因対処
火がつきにくい・すぐ消えるお香が空気中の水分を吸っている密閉容器+乾燥剤で保管し、点火時は先端が赤くなるまで長めに炙る
香りがこもる・重く感じる窓を開けられず空気が動かない半分に折って約15分にとどめ、焚く前か焚いたあとに換気する
気分が沈む・億劫になる雨音と薄暗さで一日の区切りがつきにくい「雨の日の一本」を決め、焚く行為そのものを切り替えの合図にする

ひとつずつ、順に見ていきます。

火がつきにくい — 原因は湿気、対処は保管と点火

雨の日に火がつきにくいのは、お香が空気中の水分を吸って、燃え始めるまでに時間がかかるからです。お香の主原料は植物性の粉末(椨〈たぶ〉の樹皮の粉と香料)で、紙や木炭と同じように湿気を吸います。湿ったお香に火を近づけても、表面が焦げるだけで種火が育たず、離した瞬間に消えてしまいます。

湿度と燃え方の関係(模式図) 湿度が高い → ← 乾いている 乾いた日 安定して燃える やや湿った日 火つきに時間がかかる 雨の日 種火が育たず消えやすい

対処は「湿らせない保管」と「湿っていても火をつける点火」の二段構えです。

  1. 密閉容器+乾燥剤で保管する — 買ったときの紙箱のまま棚に置いていると、雨の数日間で湿気を吸います。ふたつきの缶や密閉容器に移し、菓子などに入っている乾燥剤を一緒に入れておくだけで変わります。詳しくはお香の保管方法と使用期限をご覧ください。
  2. 先端が赤くなるまで、長めに炙る — 乾いた日と同じ感覚で火を離すと、種火が育つ前に消えます。先端全体が赤く色づくまで数秒長めに炎を当て、炎が立ったら軽く振って消し、赤い種火だけを残します。
  3. 湿ってしまったら、数日かけて戻す — 密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて置くと、火のつき方が戻ることがあります。ドライヤーや直射日光で急に乾かすのは、割れや香りの変化のもとになるので避けてください。

それでもつかないときは、湿気以外の原因も疑ってください。原因の切り分けはお香に火がつかない・すぐ消えるときの原因と直し方にまとめています。

香りがこもる — 短く焚いて、換気は前後に

雨の日に香りがこもる対処は、1本まるごとではなく半分に折って約15分にとどめ、換気は焚く前か焚いたあとに行うことです。窓を開けられない日は部屋の空気が動かず、湿気を含んだ空気は香りを重く感じさせます。乾いた日と同じ約30分を焚くと、量が過剰になりがちです。

換気のタイミングにはコツがあります。焚いている最中に強い風を通すと、燃え方が偏り、灰が飛びます。雨が弱まった隙に窓を数分開ける、あるいは換気扇を回すなら、焚く前にいったん空気を入れ替え、焚き終えてからもう一度、という順番が落ち着きます。焚いている間は空気を動かさないほうが、香りも燃え方も安定します。

置き場所も見直してください。雨の日は洗濯物を室内に干す方が多く、湿った布の近くは香りが移りやすい場所です。部屋の反対側、できれば少し高い位置に置くと、香りが均一に広がります。場所ごとの考え方はお香はどこで焚く?に詳しく書いています。基本の手順はお香の使い方・焚き方入門もあわせてどうぞ。

気分が沈む — 「雨の日の一本」を決めておく

雨の日に気分が重くなるとき、焚く行為そのものを切り替えの合図にするのがおすすめです。雨音と薄暗さが続くと、朝と昼、仕事と休みの境目が曖昧になります。そこに「雨の日はこの香り」と決めた一本があると、火をつけた瞬間に区切りができます。香りに気分を変える力があると断定はできませんが、小さな儀式が一日にリズムをつくると感じる人は多いです。

雨の日の香りは、雨の匂いと喧嘩しないものを選んでください。雨の日の空気には、濡れた土や草の匂いがすでに含まれています。そこに甘さの強い香りを重ねると、湿気も手伝って重たく感じることがあります。逆に清涼感があり、輪郭のはっきりした香りは、雨の匂いと並んでも互いを邪魔しません。

nagomi.で雨の日の定番としているのはです。雨上がりの森を思わせる清々しさがあり、湿った空気の中でも香りの輪郭が保たれます。窓の外の雨と、部屋の中の檜。同じ「水と木」の系統なので、違和感なく一つの空気になります。檜の香りそのものについては檜のお香で詳しく解説しています。甘い系統がお好きな方は、金木犀を半分に折って短く焚くと、雨の日でもちょうどよく収まります。

梅雨と秋雨の違い — 気温が低いぶん、秋は扱いやすい

対策は梅雨と共通ですが、秋雨は気温が低いぶん香りが夏ほど強く立たず、扱いやすいです。香りの成分は温度が高いほど広がりやすく、夏の湿気と高温の組み合わせは香りを重くします。秋の雨の日は湿度こそ高いものの、気温が下がっているので、梅雨に「重い」と感じた香りがちょうどよく収まることがあります。

秋雨が明けると、空気は一気に乾き、お香がもっとも素直に香る季節がやってきます。その前の数日間を、湿気に負けずに乗り切るための記事として、この内容をお役立てください。どの香りが自分に合うか迷う方は、40秒の香り診断をどうぞ。

よくある質問

雨の日はお香に火がつきにくいのはなぜですか?
お香は空気中の水分を吸いやすく、湿気を含むと先端が燃え始めるまでに時間がかかるからです。火を近づけてもすぐ離すと、表面だけ焦げて種火が育ちません。先端が赤くなるまで数秒長めに炙り、炎が立ったら軽く振って消してください。それでもつかない場合は、お香そのものが湿っている可能性があります。
湿気でお香が湿ってしまったら、もう使えませんか?
多くの場合、使えます。密閉できる容器に乾燥剤と一緒に入れて数日置くと、火のつき方が戻ることがあります。直射日光やドライヤーで急に乾かすのは、割れや香りの変化につながるので避けてください。カビが見えるものは使わずに処分してください。
雨の日に窓を開けられないとき、香りがこもらないようにするには?
1本まるごとではなく、半分に折って約15分にとどめるのが確実です。焚き終えたあと、雨が弱まった隙に数分だけ窓を開けるか、換気扇を回してください。焚いている最中に強い風を通すと燃え方が偏るので、換気は焚く前か焚いたあとに行うのがおすすめです。
雨の日に合う香りはどれですか?
雨の匂いと喧嘩しない、清涼感のある香りが合わせやすいです。nagomi.では檜のように輪郭がはっきりした香りを、雨の日の定番としておすすめしています。甘さの強い香りは湿気を含んだ空気の中で重く感じることがあるので、量を控えめにするとよいでしょう。
梅雨と秋雨では、お香の扱いに違いがありますか?
基本は同じですが、秋雨は気温が低めなので、香りが夏ほど強く立ちません。梅雨の時期に「重い」と感じた香りでも、秋の雨の日にはちょうどよく収まることがあります。保管と点火の対策は共通で、密閉容器と乾燥剤、先端をしっかり炙ることが基本です。
nagomi. 香り監修 川辺一寛

Supervisor

川辺 一寛nagomi. 香り監修

京都生まれ、京都育ち。株式会社若林佛具製作所にて四半世紀以上にわたり香りと向き合い、仏事コーディネーター・京仏マスターソムリエの資格を持つ。nagomi.では香りの方向づけと、淡路島の香司との焚き比べ・共同開発を担う。

雨の匂いと、喧嘩しない。nagomi. 檜(約60本)

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雨上がりの森のような清々しさ。湿った空気の中でも、輪郭のはっきりした香り。天然香料・日本製。¥1,280(税込)

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